寺江圭一朗 個展「穴」

広島生まれ、福岡在住の美術家、寺江圭一朗の個展「穴」を開催します。

寺江はこれまで、福岡、長崎、沖縄、韓国、中国など様々な場所で制作を行ってきました。福岡では「寺江君の友達」と書かれたピンズを制作し、来場者に販売する展示、韓国では、日本人の寺江が片言の韓国語でトイレ掃除をさせてもらえないかとお願いする映像作品（この作品は同タイトルで中国、沖縄でも制作されました）長崎の伊王島では、外部から来た寺江が、清掃と信仰を結びつけた新たな行事を生み出すプロジェクト（5年後の現在も地域の行事として続けられているそうです）などを制作してきました。

寺江の作品の特徴の一つとして「寺江自身が他者へ関わりを投げかける」ものがあります。しかしそれらは決して受入れられやすいものではありません。むしろ相手に困惑を生むような場合が多々あります。テーマが「友情」や「植民地」「宗教」など容易に通じ合えるものではないから、というのもありますが、寺江のその手法がユニークであるというのも理由の一つです。

話しは変わりますが、寺江は外国人と話す時に共通言語である英語を使わず、日本語で話しかけ相手に困惑を与えます。しかし最後には何故かハグをしたりします。寺江は他者に対してわかりやすい共感を求めることはありません。しかしその「繋がらなさ」を持ってして他者との関わりをやめようとしません。「繋がらなさ」を生むことで他者との関わりの間に、別の回路を切り開こうとしているのかもしれません。個人間、地域間、国家間など、どんなレベルで起こっている事柄であっても、既にある言説に頼る事なく、自身をメディウムとした作品を通して投げかけ続けています。

本個展では、近年寺江が取り組んでおり、昨年のリヨン・ビエンナーレにも出展した、自身が石職人に扮した映像作品と、制作した石を使ったインスタレーション作品の発展バージョンを展示します。寺江はなぜ石をつくるのでしょうか？作中でも口頭でも明確な答えを示しません。寺江は何を考えているのでしょうか。また、私たちはそれをどう受け止めるのでしょうか。

冬の寒いアトリエと山で制作しました。寺江と私たちの間に生まれる困惑、そしてその先の可能性にぜひご期待ください。

寺江君の友達／ピンズ、など／2008年

限られた言葉とトイレの捕獲（釜山）／映像／2011年

伊王島歴史御輿散歩／角材、スチロール、石粉粘土など／2010年

another way 石職人／映像／2014年

寺江圭一朗

1981年　広島生まれ
2005年　大分大学大学院　修了
2005年4月-2008年3月　3号倉庫にてレジデンスプログラムに参加（福岡）
2008年7月-2010年8月　旧大賀APスタジオを共同設立（福岡）
2013年10月-　+100P arts & studio 立ち上げ（福岡）

主な展示
2015年『第13回リヨン・ビエンナーレ「rendez-vous15」』
2014年『福岡県文化会館建設50年記念「とっとっと？きおく×キロク＝」』（福岡県立美術館/福岡）
2014年『世界の在りか－インドネシアと日本』(福岡アジア美術館・交流ギャラリー/福岡)
2012年『A as A』(53美術館/中国)
2013年　個展『空っぽの音 満ちた声 それから その真ん中』（ARCADE/沖縄）
2011年『釜山花村国際自然芸術祭』（Art in Nature/韓国）
2010年『ながさきアートの苗プロジェクト』（伊王島/長崎）
2010年　個展『トランスダイエット』（旧大賀APスタジオ/福岡）
2008年　個展　寺江圭一朗展（gallery58/銀座）
2006年　個展『カミサマ教』（３号倉庫/福岡）

http://www.terae.info/