西光祐輔：I forgot but I can see.I remember but I can't see.

東京・大阪を拠点に、精力的に活動を続ける写真家・西光祐輔の、九州では初となる展覧会を開催します。
この展覧会は、京都→大阪→福岡と結ぶ巡回展です。
会場はどこも、有志で運営するオルタナティブ・スペースで、展覧会会場として必ずしも整った、ホワイトキューブのような場所ではありませんでした。広さも採光も全く異なります。
作家は毎度会場と対峙し、新しく展示をくみ上げます。展示物の数も異なりますし、どの会場も全く違う構成になっているはずです。
既に他の会場を御覧になった方にも、お越しいただけると幸いです。

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７月、京都での個展を見に行った。
この巡回展の、最初の展示である。
私が西光祐輔の写真を実際に見るのは、それが初めてだった。
たくさんの写真が、会場全体を使って並んでいた。

写真の多くはスナップ写真のように、一見気軽なものだった。
日常の風景ーそれも、誰もあえて写真になんて撮らないような風景さえある。
どこを見ているともない友達、フラッシュで唐突に浮かび上がった動物、光を受けてぼんやりと浮かぶ雨粒、部屋のゴキブリ、ピンクチラシ、床に溢れたワイン。その一方で、美しい風景写真に、光の筋が入る。夕暮れの海がある。
美しいものと、汚いものと、何ともいいようのないものが、同じ場所に並んでいた。

写真の中には、臨場感があったり、時間や音や、時には暖かい光を感じさせるものがあると思う。
しかし西光の写真の中には、驚くほど何もなかった・・というと語弊があるかもしれない。
しかし、写真の中で、音や動きは　まったく切り取られているように感じられた。

ふいに切り取られた場面。そこには時間も動きも奪われ、ただ光をあてられ、切り取られた風景のみが残る。あまりにも無音で、無機質な世界。
しかしその写真たちは、展示されることによって再度時間と動きを与えられ、別の物語を語り出し、見るものの世界を静かに震わせるのかもしれない。

展示を見たあと、どこか寒い場所に行って来たような、外国から帰ってきたような気持ちになった。何がどうしてそのような感覚を得たのかは分からないが、自分の日常とは少し違う場所にいってきたという感覚。そしてその感覚は、生活の中でもふいに甦ってきて、懐かしいような居心地の悪いような、不思議な気持ちに私をさせる。どうしてこんな感覚になるのだろう。
それは次の展示で考えようと思っている。

福岡では、この空間を使ってどのような展示を見せてくれるのか、楽しみになった。

（小山冴子）

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巡回展について

全国には、特定の作家を抱えることをしていない、いわゆる『オルタナティブスペース』が沢山あり、今回は3都市のスペースが連携し、会場を提供する事で西光祐輔の巡回展は成立致しました。
既存のアートシーンの周縁部であるとされる、オルタナティブスペースが連携をする事により、
より面白い状況が作れる事と信じ、今回の展示もその思いから実現致しました。
引き続き今後もより連携を深め、またその輪を押し拡げていくことによって、展覧会を観る機会／観せる機会を、それぞれ生活を送る場所に、より増やしていきたいと考えています。

この展示がどのように福岡の皆様に受け止めて頂けるのか、私自身も不安と楽しみでいっぱいです。
是非art space tetraに足をお運びくださいますよう、よろしくお願い致します。

adanda　小西小多郎

adanda
2011年8月に大阪・北加賀屋のコーポ北加賀屋という共働スタジオ内にオープンしたスペース。いかにして作家と共犯関係を築いていけるか、それを考えながら多様な形態のイベントを企画／開催している。

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ライブ
10月7日　20:30から
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