popo
山本信記(trumpet, synth)、喜多村朋太(organ)、江崎將史(trumpet, recorder)
2004年大原裕追悼ライブの際に3人で演奏したのがきっかけとなりスタートした、チェンバー・ロックスティディ・バンド。おおらかで繊細、なおかつ線の太いメロディを、この限定された小さな編成の中でつむいでいく。今年7月、1st CD [kibito] がcompare notesより発売された。http://popokibito.exblog.jp/
山本信記
1973年大阪生まれ。live! laugh!、 hikings(1999年リコ・ロドリゲスのツアー・バンドを務める)などのバンドに参加。現在、popoの他に、かきつばた、XOEXABなどで活動中。
喜多村朋太
1970年生まれ。大博士、PIGFATPIGS等を経て、現在、POPOの他に自身のブルービート楽団「メトロノームス」、ふちがみとふなとの渕上純子とのうたものデュオ、TUFF SESSIONのサポートメンバーなどなど。
福井県敦賀市在住、陶器を作る。サバの生寿司が好き。
江崎將史
1969年生まれ。96年より即興を軸にするライヴ活動を始める。トランペットを金属の管であると再定義、独自に奏法を開発、また身の回りの 生活廃品などを使用。即興演奏ではソロのほか、国内外の多くのミュージシャンとセッション、録音を重ねる。他に山本信記とのトランペット・デュオ、15秒から1分ほどの曲をつらつらならべるOMM-pahがある。アキビン吹奏、アキビンオオケストラ主宰。宇波拓とのduo 、mangamichi 。同じく宇波ひきいるホースに在籍。
[plan] Masafumi Ezaki
[support] art space tetra
popoの音楽を耳にした瞬間、誰もが少しだけ 戸惑うことだろう。それは、斬新な音楽が人の心を奪うような衝撃とは逆のベクトルにある、「こんなにもシンプルな形で音楽が成立するんだ」という静かな驚き、のようなもの。もちろん、少ない音素で成立する音楽は山ほどある。ただ、彼らの音に向き合ったときのざわざわと心が震える感じ、 それは初めて自ら選択して好きな音楽に出会った ときのあの感覚に少し似ている。森の小人が編み出したかのような朴訥な旋律、それをミュートと抑揚の効いた2本のトランペット(時にリコーダー)が丁寧に追い掛ける。歩みをサポートするのは、極上のダブ・マナーを感じさせる穏やかなオルガン......優しいメロディに心をくすぐられながら、気付くと僕らは空気の音を聴いたり、全く 別のことを考えたりしている。それが、POPOの音楽。
今は亡きトロンボーン奏者・大原裕の追悼ライヴにおいて、その天上の旋律を描き出すために結成されたのがこのトリオ。トランペット&リコーダー(+アナログ・シンセ)には、「トランペットを吹かないトランペッター」としても知られるフ リー・インプロヴァイザー江崎将史(もちろんPOPOではたっぷりと吹きます奏でます!)、大原裕のブラスバンドLIVE! LAUGH!にも参加し、現在はかきつばたやTHE FOX、XOEXAB等々、関西アンダーグラウンド・ポップスの金管を一手に担う山本信記、そしてオルガンには、かつてmama! milkの清水公輔とのPIG FAT PIGSや大宮イチとの大博士での活動はもとより、オクノ修や渕上純子をサポートし、京都では知る人ぞ知る笑顔のオルガニスト喜多村朋太。この一癖も二癖もある輩にも関わらず、その毒牙を隠し通して(いや、もちろんバレているけれど)、ひとつひとつ丹念に音を紡いでいく。その姿は、時に職人的な気高さと初めて楽器を奏でた時のピュアネスが見事に同居していると言えよう。
7月にcompare notesよりリリースされた1stアルバム「kibito」では、彼ら3人に加え、東京アンダーグラウンド・ジャズ界最高の才人/洒落人・中尾勘二が破天荒なドラムで参 加、また、宇宙を感じさせるスライド・ギターは、OUTO、Rise from The Deadでの活動で知られるMOTSが担当。 POPOの世界観をより大きなものに昇華している。
そんな特別な音楽に突き動かされるミュージシャンも数多く、USインディ最高のスマイル・アイコン、ジャド・フェア (ハーフ・ジャパニーズ)は、彼らの演奏にかぶりつき、終演後握手を求めてきたという。また、ジャドの来日に帯同した奇才ロブ・エリクソンは、彼らの音楽を称して「パーフェクト・ミュージック!」と大絶賛。また、山本はスコットランドの怪人ビル・ウェルズのトリオ公演において、ビル、そしてベル&セバスチャンのスティーヴンと共演、フロントアクトを務めたPOPOも高い評価を得ることとなる。また、今年の2月には、大友良英のビッグバンドONJQの京都公演をサポート。彼らの静かで小さな音楽が、今、ジャンルを超えて浸食し始めているのだ。
(小田晶房 / map)